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カワサキ Z900RS

 

昨年から話題になっていたカワサキ「Z900RS」だが、つい先頃ティザー動画も公開されるなど、いよいよその姿が明らかになってきた。

正式発表は10月25日から開催される東京モーターショーで行われるとのことだが、手元にある情報からその実像を探ってみた。

Z1を彷彿させる正統派スタイル

ティザーの30秒ほどの短い映像からも、じっくり見直すといろいろな情報が読み取れる。冒頭のパーティで映し出させれるのはまさしくかつてのZ1(Z900)である。

▲ティザー動画より

金髪を風になびかせて颯爽と走る女性ライダーの姿は新たな時代とエレガンスの象徴だ。つまり、現代の「Z」はもはや”男カワサキ”だけのものではないことを示唆している。

ガードレール越しにチラッと現れるシルエットからは、往年のZ1を彷彿させる正統派ネイキッドの姿カタチが透けて見える。

エンジンのシリンダーにはフィンが切ってあるが、大きなラジエターを装備しているのでエンジンは水冷のはず。滑らかなラインを描くフューエルタンクにはZ1でも人気だった火の玉カラーが再現されている。

続くガソリンスタンドのシーンでは、クロームメッキのリムに収まる丸目1灯のヘッドライトや砲弾型2連メーター、薄型のZ1タイプミラー、別体式リザーバータンクなど旧Zの面影を残しつつも、灯火類はウインカーも含めてLED化されるなど現代的な装備であることをうかがわせる。

▲ティザー動画より

フロントフォークも径の太さと構造からおそらく倒立タイプ、ということはリヤサスもおそらく今風のモノショックだろう。

ベースは現行型Z900か!?

▲Z900

そこで気になるのがZ900RSのベースとなるマシン。順当に考えれば、Z900RSのベースは輸出モデルの2017年型Z900と考えていいだろう。

そのZ900とは2016年のEICMA・ミラノショーで発表されたブランニューモデルのこと。「凄み」をキーワードに、エキサイティングな乗り味と斬新なスタイリングを求めたZシリーズの最新版である。

▲Z900

エンジンは新設計の水冷並列4気筒DOHC4バルブで、948ccから125ps/9500rpmを実現。扱いやすい低中速トルクに加え、鋭いスロットルレスポンスと高回転域まで心地良く吹け上がるパワーフィーリングが特徴だ。

▲Z900

6速ミッションはストリートでの加速を重視したショート設定で、クラッチ機構には軽いレバー操作とともにエンジンブレーキの最適化を図るアシスト&スリッパ―クラッチが標準装備されている。サウンドにもこだわり、加速時にはエアボックスの共鳴効果により胸のすくような吸気音を奏でる設計だ。

また、フレームは新設計の高張力鋼管トレリスタイプを採用。軽量かつ剛性バランスに優れるのが特徴で、最近ではスーパーチャージャー搭載の最速マシン、H2/H2Rにも採用されて注目された。

▲Z900

足まわりにはフロントにφ41mm倒立フォーク、リアはショックユニットを水平方向に設置したホリゾンタルバックリンクサスペンションを採用。スイングアームも新設計とし、ダイレクトなトラクション感と快適な乗り心地を両立している。

また、ブレーキはニッシン製の新型でフロントがφ300mmダブルディスク&対向4ポッド、リアがφ250mmディスク&シングルピストンで、ディスク形状はZ800やZ650などと同じペータル形状を採用。ABS仕様も用意されている。

▲Z900

Z900は軽量・スリムな車体とダイレクトな操作フィーリング、そして意のままに操れるコントロール性を実現したモデルである。車重で比べてもZ1000より11kg、Z800よりも21kgも軽い210kgを達成するなど、俊敏なフットワークが与えられていることは明らかだ。

以上は現行のZ900の特徴を要約したものだが、今回の「Z900RS」がこれをベースとしたネオクラシックモデルだとすれば、加速性能やハンドリングも含めた走りのパフォーマンスについても相当期待できそうだ。

モーターサイクルの歴史に燦然と輝く名車「Z1」

Z1
▲Z1(Z900)

ところで、「Z900RS」のネーミングの由来だが、かつてZ1はZ900とも呼ばれたこと、また国内向けにZ1のスケールダウン版として投入されたZ2(通称ゼッツー)の正式名だった750RSの両方をミックスしたものと思われる。ちなみにRSとはロードスターの意味である。

今や伝説となったZ1だが、知らない人のために少しだけ解説しておこう。

72年に発売されたZ1は当時の世界最速マシン、CB750フォアを超えるためにカワサキが全力投球で作り上げたスーパースポーツである。ネーミングには究極を意味する「Z」と世界一を表す「1」が与えられた。

空冷直列4気筒は当時最先端のDOHC方式を採用し、排気量903ccから82psを実現。ゼロヨン加速12秒、最高速度210km/hオーバーは、目標だったCB750フォアを凌駕し堂々の世界最速マシンとなった。

Z1は現代で例えるならさしずめH2のような存在だったわけだ。「ニューヨークステーキ」の開発コードネームからも分かるように、Z1のメインターゲットである北米において狙いどおりの爆発的ヒットを飛ばし、その後のカワサキの北米進出の地盤を作ったことは有名な話。その高性能により数々のレースでも活躍した。

最強最速マシンとして君臨し続けたZの系譜

Z1はその後も排気量を拡大しつつ進化し続け、映画「マッドマックス」で世界を熱狂させたZ1000や、のちに4度のWGP世界タイトルに輝くエディ・ローソンが、81年のAMAスーパーバイク選手権でCB900を駆る天才フレディ・スペンサーに競り勝ちチャンピオンを獲得したZ1000J、さらに電子燃料噴射装置を搭載したZ1100GPから、空冷Zシリーズ最後のモンスターマシンGPZ1100へと発展。

水冷エンジンを搭載した新世代マシン、GPZ900Rが登場するまで世界最速マシンの称号とともに君臨し続けたのだった。

デビューからすでに30年以上の月日が経つ旧Z系モデルだが、いまだに世界中に多くのファンがいて、程度の良い車両はプレミアムが付くほどの人気ぶりであることは周知のとおりだ。

以上のように、「Z」を待ち焦がれるファンだけでなく、作り手であるカワサキにも相当な思い入れがあるはず。果たしてその期待に応えられるか、すべては10月25日の東京モーターショーで明らかになるはずだ

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